逆張記譚

ぎゃくばりきたんと読みます。ゲームもリアルも気まぐれに

BIOMODに出場したと思ったら返り討ちにされた話

はじめに

この記事は iGEM・合成生物学 Advent Calendar 2019 、15日目の記事です。

adventar.org

 

タイトル見て、iGEMじゃねーのかよ!ってツッコミたくなる方もいるかもしれませんが、iGEMは未経験のため書けることがほぼなく、概略も一日目のらいるとさんが書いてくださってるので、経験のあるBIOMODの方について書きます。

 

rairuto.hatenablog.jp

らいるとさんの記事はこちらから

 

来年度、4年ぶりに東大からiGEMでるので乞うご期待!

  

BIOMODとはなんぞや

BIOMODとは、毎年サンフランシスコで開かれる、世界中の学部生による国際コンペです。DNAやRNA、タンパク質と言った生体分子を用いた機能性の分子ロボットを作成し、様々な課題の克服を競います。

 

iGEMerに分かりやすくいうと、iGEMは大腸菌とか遺伝子をいじるのに対して、BIOMODはDNAを素材として構造物を作るみたいな感じです。

 

その一例がDNAオリガミで、DNAが相補的に結合することを利用して、目的の構造体を作る技術です。

 

これの嬉しい点は、DNAを設計してあげれば、後は勝手に結合して目的の構造が「出来る」点です。

 

DNAを混ぜるだけでこんなマークとかも出来ちゃいます。

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"Folding DNA to create nanoscale shapes and patterns" Rothemund, P. W. K. Nature 2006, 440, 297. doi:10.1038/nature04586

 

最近では三次元構造を構築でき、その中に薬剤を入れてDDSを行うなどのアプリケーションもあります。[1]

 

 

大会について

前日から書いていきます。以下基本常体。

 

 

 

さあ、いざアメリカに向かうぞと学校が終わると荷物を取りに家に帰る。

 

 

10月25日金曜日17:05発の便を取っていたので、初の一人での海外ということもあり余裕を持って3時間前に着くようにバスを取った。

 

 

あいにくの台風の天気とは裏腹に、出国前最後の日本食だと、つけ麺をキメてハイな気分でバスに乗り込む。

 

 

 出発してから小一時間経っただろうか。後は待つだけだと余裕綽々で腕を組んで外を見てみると異変に気づく。アナウンスがあって「道路が冠水しているので迂回します」とのこと。

 

 

他の乗客は到着が遅れるかも知れないと航空会社に電話していた。しかし今日の私は一味違う。3時間前に着くのだから数十分遅延した所で痛くもかゆくもない。

 

 

再び腕を組んで、眠ろうとした所で再度アナウンス。「冠水情報が更新されてまた通れなくなったので迂回します、到着は未定です」ということらしい。

 

 

係員さんも本社に電話をかけて揉めていて、位置情報と冠水状況をよこせだの、後何分くらいで着く見込みか計算してくれだのと尋常ならざる様子。既に1時間ほど遅延している。おいおい、あと余裕30分しかないぞぞぞ

 

 

到着未定とのことなので、航空会社に電話してその旨を伝えたら、「便は今の所予定通り出発します、振替便も明日の同じ時間しかないです」と言われたので、やむなく予約した。

 

やることはやった。一息つこうとした所である事に気づく。

 

 

喉が。渇いた。

 

 

ご存知だろうか、日本人の目標ナトリウム摂取量は3200mg未満らしい。

 

 

それに対してつけ麺に含まれるナトリウム量は冷凍のものでも2100mg。ナトリウム量を電車の座席だとすると、ヤンキーが座席に寝っ転がって5席分ほど占拠しているようなものである。

 

 

あろうことか汁まで完飲してしまっていたので、それがダイレクトに吸収されているのである。ともかく、ヤンキーが血液の中を電車の座席に寝っころがりながら流れているのを想像してもらえれば良い。ヤンキー of 日本泳法

 

 

もちろん、飲み物は買っていないし、バスなので途中で降りて買うことも出来ない。到着目安が分からない状況で、バス内でヤンキーとの乱闘が繰り広げられていた。

 

 

バスは依然として進まず、結局空港に着いたのは5時間遅延で18時55分だった。なんだあの陸の孤島は。。

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5時間遅延の証明書

 

到着した所でやるべきことがあった。

グローバルWifiの受け取りである。

 

 

 グローバルWifiは、簡単にいうと海外でもインターネットを出来るようにする機械だ。これが無いと到着後に連絡や検索が出来ず路頭に迷うことになる。さらにTwitterも出来ない。それは困る。

 

 

受け取りロッカーが19時丁度で閉まるので、荷物を下ろすや否や脇目も振らずガンダッシュした。

 

 

その時の動きはさながらオリエンテーリングのようだった。入り口で一瞬で空港の地図を叩き込み、人混みを避けてロッカーへと急ぐ。

 

 

ロッカーに辿り着き解錠する。ここでタイムを確認すると18時59分、10秒ほどして19時へと変わった。

 

 

世界記録を更新したウサインボルトはこんな気持ちだったのかと、脳内でボルトと固く握手を交わした。今度は同じ土俵で走ってみような、ブラザー。

 

 

飛行機の発着掲示板を見に行くと、当初の便は欠航になっていた。そうなると空港泊になるので携帯の充電に不安が残る。

 

 

残りわずかな電池で電源のある場所を調べ、そこに向かう。運よく1席だけ空いていたの見つけた。と同時に、同方向へ歩いてくる外国人も見つける。

 

この席だけは譲ってはいけない、本能が雄叫びを上げるや否やその席に向かって飛びつく。

  

 

突然だがみなさんは、マズロー欲求段階説をご存知だろうか?曰く、他のどのような欲求よりも生理的欲求が最も主要な動機となるらしい。

 

 

だが、その時の動きは喉の渇きヤンキーとの闘い中であることを感じさせないどころか、Wifiの時を上回るほどだった。俺はボルトを超える

 

 

従って、以下のような欲求ピラミッドが書けるだろう。

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現代のマズロー欲求段階説

 

当時はただ面白いと思っていただけのTweetを、まさか体験するとは思ってませんでした。

 

 

席を確保しペットボトルを買い諸々の作業を終わらせると、10時のつけ麺以来鳴りを潜めていた胃が食欲を叫びだす。

 

 

もう22時で店はやっておらず手持ちの食料もなかったが、今までの死闘を乗り越えてきたことを考えると我慢できる、とか考えてたら、アナウンスがあって、寝袋とクラッカーと水を配布しているとのことなので頂いて食べました。

 

 

ふとするとまぶたがその存在を主張してくる。もう寝よう、そうささやきかけてくる。

 

 

こんな時、マズローならどう答えるだろうか?え、生理的欲求には従う?さいですか

 

 

他愛もないことを考えながら意識は薄れていった。

 

 

 

 

後は、同じく便が欠航になった先輩と合流して、アメリカに着く時間を出来るだけ早める為に羽田発の便に振替直して、始発で成田から羽田に向かったり、機内で見逃していた名探偵ピカチュウを見たり、着いた時にはジャンボリーはもう始まっていたので昼休みに初めてリハーサルしたり、コスプレして発表したり観光したり交流したり色々ありました。

 

力尽きたので、聞きたいことあったら@bibianpokeに直接聞いてください(

 

 

感想

初の記事ということで気合いを入れて文章書いて見たけど、自分で読み直すと恥ずか死ですね

 

文体は実は一番好きなブロガーの熊谷さんを参考にしたんですけど、こんな駄文とは比べものにならないのでよければ読んでみてください。

 

自分のは盛り上げ部分が欠如してるのと、抽象化からそれっぽい世界観を広げるのと、終盤で情景描写を交えていい感じに終わるのが足りないのは分かってるけど、如何せんそれを文章に書き起こせない…プロは違いますね

 

↓熊谷さんのブログ

無断掲載なので、問題があれば削除します。

manato-kumagai.hatenablog.jp

 

BIOMODの大会について。

結果から言うと、Project Awards: Goldと、Best Project Website: 3rdでした。

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東大としては数年ぶりのGoldなのでそれは良かった反面、直前期までタスクを残しており詰め込む形になってしまったので、プレゼンや動画、wikiも含め、詰めの甘さを実感する結果となりました。

 

Team Sendai東北大学)がGrand Prize:3rd、Best Presentation: 1st、Audience Choice Award: 1stを獲得していることを考えると、東大もGrand Prize狙えたなあと言う印象。

 

プレゼンも本番先輩がめっちゃアドリブきかせて観客の笑いを取れていたので、自分含め他全体のクオリティを上げれば東北大と同等位のところまでプレゼンは狙えそう。

 

Wikiも内容と目新しさに助けられて3rd取れるなら、もっとデザインとか凝れば1stも全然手が届く範疇。

 

動画は頑張りましょうだけど…

 

東北大東北大言ってますが、実は到着した時には東北大のプレゼン終わってたので見てないんですけどね!

 

来年は順当に進めてGrand Prize取りたいです、取りに行きます。

 

反省点等

iGEMerにも役に立ちそうな話を縦割りで書いて行きます。

アイディア出し

アイディア出しに関しては、いいアイディアが出てもそれを実験できるかは別。研究室がすでに決まっているなら、研究室の設備、試薬を踏まえた上で、アプリケーション的なアイディアを考えた方が(完成度の観点から)良い。アドバイスとかもらいやすいし。

 

アイディア出しから始めて研究室を探す場合は、早いとこテーマの方向性を絞って研究室を探した方が良い。テーマがある程度あると、研究室も貸してくれやすいのと、研究室を借りた後に、試薬と設備がないので他にも声をかけてみますとかは大変な迷惑になるので。

 

今年のBIOMOD Team Tokyoについて言うと、アイディア出しから始まったのだが、DNAオリガミをお邪魔しているラボでは使えないとのことで、メンターの方も使ってる機構を利用してそのアプリケーションを考える方向に変わった。

 

国内大会ではDNA増幅を利用した論理ゲートの構築・群ロボットがテーマだったが、その機構を使う唯一性が無い(他の機構でも実現できる)ことが明らかとなり、国内大会後にアプリケーションを血液凝固システムの再現に変更した。

 

このように、土台となる技術があると、アプリケーションを変えやすいのは利点であると考える。

 

実験

実験はまず、人が問題となる。

 

同じ人だけが毎回通うのも負担がかかる、かと言って全員で交代制にすると情報共有の観点から問題が生じやすい。

 

どっちもどっちだが、個人的には特定の少人数が実験を行う派である。

 

単に情報共有の手間が減るのと、実験に慣れていくので人数が揃わない時でも一人二人で進められうるからである。

 

実験室の規模やプロトコルにもよるが、同時に3,4人とかは実験できないので人が多ければいいと言うものでも無いし。

 

実験班が4,5人いればおおよそ2人はこれるであろう。

 

勿論、少数班だからと言って情報共有がいらないわけでは無い。実験ノートとデータ解析を毎回することで、他の実験班メンバーへの引き継ぎ及び、wikiを書き始める際の他のメンバーへの引き継ぎが圧倒的に楽になる。

 

さらっと言ったので、もう一回強調しておくと、

「実験ノートは再現できるようにとれ」

「データは毎回解析して、実験の結果をわかりやすくしろ」

これが今年の一番大きな反省である。

 

夏休み前の段階で、ラボの機器の使い方を覚えるのと、実験ノートの取り方をしっかりメンターの方に教えてもらっておくと、夏休み以降に進めやすくなり、また、スランプに陥った時にどこが悪かったか見つけやすくなる。

 

なお、東北大のように研究室主体で参加している所はその限りではない。

Wiki

これが一番重い。

 

と言うのも、夏休みが明けた段階で実験が全て終わっているのは稀であるにも関わらず、実験データがないとwikiが書きにくいので、wikiに割く時間が絶対的に足りなくなるからである。

 

たまにあるのが、実験の進捗が悪かったor予想と違ったため、プロジェクトのゴールを下げたり変更したりするケースがある。

 

そうなると、wikiを事前に書いていても変更になったりする危険があるため、前々から書いて行くのも難しい。

 

ここでも大事になってくるのが実験データの共有である。

 

夏休みが終わった段階で、実験データを解析して一度まとめ、どこをプロジェクトのゴールにするのかをチームとしてまとめた方が良い。そうすれば多少は並行して進めることもできるだろう。

 

wiki作成に何を使うかという話はiGEMに関してはそんなに知らないので触れないが、BIOMODで言うと今年はGitHubを使った。これは複数人で同時に作業できるメリットがある。

 

とは言うものの、GitHubを触れる人が一人しかおらず、その利点を活かす事が出来なかったのも反省点である。

 

大抵の場合、wikiの文章を作るのはfreezeの直前期になるため、wikiを担当する人は、それを待つのではなく、先に雛形を作っといてそこに文章を入れると言う形にしないとキャパるので注意。

 

あと、実験班に解析したデータとrow dataを催促するのもwikiの仕事である。wikiの構想があると、文章もそれに合わせて作ればいいのでやりやすい。

 

あと参考までに分子ロボティクス学会の「BIOMOD虎の巻」という、素晴らしい資料を載せておこうと思う。プロジェクトの進め方等の体系立っていない点について詳しく書かれている他、wikiやプレゼンの採点基準・配点も書いてある。

 

BIOMODはiGEMを参考に改善して作られた大会なので(評価基準の明瞭化が取り上げられているが、費用面も大きく変わる。チーム登録費275$、個人登録費200$で安い!)、システムが似ているので重なる点は多いだろう。

https://cbi-society.org/home/documents/eBook/Biomod2016.pdf

 

プレゼン

iGEMは知らないが、BIOMODの方では寸劇でやるところもある。

 

どちらにやるにせよ、プロジェクトの目的、新規性、唯一性、結果等進捗、展望など、採点基準にあるようなものを分かりやすく記載されている必要がある。

 

あと、Q&Aで質問が来なかった時用に、補助スライドを用意しておいて詳しく説明すると言ったチームがあり、㍂と感心した。

 

日本のチームは英語でディスアドバンテージがあるので、道具を使うなり、わかりやすく伝える工夫が必要だなとは思った。

 

その他反省点

渉外は行くべき、上手くいけば援助してもらえるだけでなく、そこでするプレゼンが非常に価値がある。別の専門の観点からプロジェクトを見てもらい、甘い点が浮き彫りになるからである。

 

お金を集めることに関しては、企業中心にスポンサーを集める時は、クラウドファンディングではなく、学校の基金のようなもの(東大の場合は東大基金)を利用した方が、企業側としても言い訳が立ちお金を出しやすい。

 

渡航に際し必要となるものは、パスポートとESTA。航空券を取る時に有効なパスポートが必要になることもある。パスポートは切れていると、戸籍を取り寄せるのに数日、パスポートが届くまでに一週間かかり、航空券が高くなったり取れなくなったりしてしまうので、遅くとも1ヶ月前には取れるようにしておきたい。

 

グローバルWi-fiに関して、価格ドットコムから入ると凡そ9割引きになるという本質情報があるので、是非利用していただければ。

 

あと前当日の天気が晴れるように祈りましょう。

 

以上長文でしたがよしなに。

 

参考文献

[1] Suping Li (2018). A DNA nanorobot functions as a cancer therapeutic in response to a molecular trigger in vivo. Nature Biotechnology 36, 258-264 (2018)